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特定技能、ベトナム人材シェア低下 初の半数割れ

ベトナム人材シェア低下とは

外国人の就労拡大のための在留資格「特定技能1号」で日本に滞在するベトナム人は6月末時点で前年比15%増の14万6,270人だった。伸び率は前年の30%下回り、年々鈍化している。1号資格者全体の伸び率の32%も下回った。インドネシアやフィリピン、ミャンマーなどからの受け入れが急増した結果、ベトナム人が占める比率は44%と、制度開始直後の2019年6月を除き初めて半数を割り込んだ。ベトナム人材は国籍別でなお最大で、人手不足に悩む日本企業からのニーズは引き続き強いが、業界関係者は特定技能の出身国の多様化は今後も続くとみている。


特定技能資格は日本国内で不足する労働力を補うために19年4月に導入された。在留期間が最大5年間の「1号」の在留者総数はコロナ後に急速に増加し、25年6月には前年比32%増の33万3,123人に達した。

特定技能の主要な供給源が技能実習生だ。25年6月時点で1号資格者の56%を技能実習の修了後に特定技能資格に切り替えた人材が占めた。ベトナム人材に限れば、71%が元実習生だ。実習生全体の約半数を占めるベトナム人が特定技能の一大予備軍を形成し、特定技能人材の増加をけん引してきた。1号全体に占めるベトナム人の比率は22年6月までは60%前後を占めていた。


ベトナムの人件費上昇で多様化進む

人材派遣などのウィルグループ傘下のウィルオブ・ワーク(東京都新宿区)のベトナム現地法人ウィルオブ・ベトナムの相川一人社長は、ベトナム人の伸び率鈍化について「かつては『実習生、特定技能といえばベトナム』というイメージがあったが、現在は選択肢が多様化している」と説明する。

相川氏は、多様化の背景にベトナム以外の国の日本語教育の充実や送り出し機関の運営レベルの向上があるとみる。ベトナムが経済成長により人件費が今後上昇するとの見立てから「今のうちにベトナム以外の国の採用実績を積んでおくべきだ」と判断する日本企業が増えていると分析する。


インドネシア、フィリピン拡大

国籍別でベトナムに次いで多いのはインドネシアで、日系製造業の現地進出の拡大を背景に前年比57%増の6万9,384人となった。ミャンマーは87%増の3万5,557人、フィリピンは28%増の3万2,396人に伸びた。ネパールも留学生の就職などを背景に73%増の9,329人に拡大した。

ミャンマーは介護、外食業界を中心に日本企業による人材採用が活発だが、現地政府が2月に開始した出国制限を受けて、日本企業の求人が他国に流れる可能性が指摘されている。


就労ハードルの低さで台湾が人気

相川氏は「ベトナムからの二大送り出し先である日本と台湾のうち、台湾を選ぶ人材が増えている」と指摘する。主な要因は賃金と並び、就労のハードルの低さがある。渡航前に日本語の学習を義務付ける日本に対して、台湾は語学力よりも実務経験を重視する傾向にあるという。相川氏は「特定技能1号で日本就労するため、自国で無給で9カ月以上の勉強をするケースも多い一方で、台湾就労に向けた準備期間は2~3カ月ほどで済むケースもある」と解説する。

ベトナム人材の伸び率鈍化には、円安で日本就労の経済的魅力が低下していることが影響した可能性もある。


製造、サービスともに人数増

特定技能人材の受け入れ先である16分野のうち、ベトナム人の1号が最も多いのは飲食料品製造業の5万1,590人で、前年比10%増だった。2番目に多い工業製品製造は10%増の2万9,327人。3番目は31%増の建設分野で2万7,811人だった。飲食料品、工業製品、建設のうちのベトナム人の比率はそれぞれ50%以上を維持している。


「人数増と多様化は継続」

相川氏は、ベトナムの特定技能人材の今後の見通しについて「今後も増加が続く一方で、出身国の多様化に伴うシェアの低下が同時に進む」とみる。親日的で文化的にも近い国民性や、日本への送り出しに政府が意欲的なことなどがベトナム人材の魅力として大きい一方で、人件費の上昇懸念がシェアの伸びを抑えると予測する。

相川氏は、技能実習に代わる制度として「育成就労」が27年4月に始まることについて、現段階では特定技能の増加傾向や出身国の内訳への影響は限定的だと分析する。育成就労は、修了後の帰国を前提とする技能実習よりも特定技能に移行しやすい制度設計となる見通しだ。


 
 
 

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