高市首相の労働時間規制緩和
- naruhito morii

- 10月29日
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労働時間規制緩和とは
高市早苗首相が打ち出した労働時間規制緩和の検討で、働く人や会社に波紋が広がっている。過重労働を苦にした広告大手電通の社員の自死を機に、2019年に始まった働き方改革から6年。「時計の針を戻すのか」「業績や仕事のスキルを伸ばすのに必要」-。賛否が交錯する一方、規制緩和は働く人の選択を前提としており、丁寧な意思確認を求める声も上がる。
「働く時間がこれ以上長くなるのは耐えられない」 福岡県内のトラック運転手の男性(37)は、新首相が早々に掲げた方針に首をかしげる。
昨年からトラック運転手に時間外労働の上限規制が設けられ、勤務時間は短くなったが、それ以前は休日が半年に1日だけのことも。「規制緩和は会社にはいいかもしれないが、働く側は昔に戻ってしまう。こっちの身にもなってほしい」
罰則付き上限規制
働き方改革は、時間外労働を年720時間以内などとする罰則付き上限規制の導入が柱。ただ、厚生労働省の集計では、長時間労働で脳や心臓の疾患を患ったとする労災認定は増加が続く。24年度は241件に上り、この5年間で最多となった。 健康被害が続く中での「方針転換」。熊本大の中内哲教授(労働法)は「規制強化を進めてきたこれまでの施策と一貫せず、違和感がある」と疑問を呈する。
長時間労働の是正に取り組む「ワーク・ライフバランス」(東京)の小室淑恵社長も「人手不足になると、企業は社員を長く働かせる方法に頼りがちだ。日本は長時間働ける若い人材が減っており、その方法だとますます世界との競争に勝てなくなる」と指摘した。一方、仕事のスキル向上や収入増を望む人は好意的に受け止めている。
福岡市の会社員(28)は「若手は量をこなすことで仕事の質を高められる。もっと頑張りたい人のための環境整備も大切だ」。同市の男性会社員(46)も「社員の自主的な『隠れ残業』で職場が回っている。規制緩和できちんと残業を申請し、対価が得られるようになるのは良いことだ」と語った。
働き方改革を巡っては経済界が長く再考を求めてきた経緯がある。九州商工会議所連合会も7月、国に再検討を求める要望を提出。経営者からは「業務が効率化されないまま労働時間が制限され、人手が不足しやすい」との声が漏れる。
見極めは上司の役目
「残業規制で若手の技術力が向上せず、海外の同業他社に後れを取っている」と歯がみするのは、福岡県内の機械メーカー幹部。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県進出などで受注増を見込んだが、人手不足で思うように業績は伸びない。「今の働き方改革は、日本の国際競争力を大きく損なう」と語気を強めた。
緩和の条件が「従業員の選択を前提にした」となっている点を注視する人もいる。福岡市の私立学校に勤める部長職の男性(46)は「部下が本当に長く働くことを望んでいるのか、そこの見極めは上司の役目。マネジメントの重要性が増すと思う」と話した。

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